テクノロジーパークは、テクノロジーの研究、開発および製造に特化し設計された場所である。1950年代に初登場したテクノロジーパークはビジネスの革新・開発に有利なスペース、インフラを装備することを目的として設計された。テクノロジーパークは最適なオフィススペース、研究室、倉庫施設、会議センター、セミナー会場などが近代的に完備されている。
世界の多くの国々において、テクノロジーパークは大学やテクノロジーセンター周辺に建設されることが多く、様々な交通手段を有しており移動の利便性が高い。ヨーロッパ最大の情報通信センターは、スウェーデンの首都「ストックホルム」にあるシスタ・サイエンス・シティ(Kista Science City)で、ストックホルム・アーランダ空港[1]まで手軽に移動できる距離にある。シスタ・サイエンス・シティは1970年代に設立され、エリクソン、IBM、スタートアップ企業、スウェーデンのトップ大学など、数多くの有名企業の本拠地であり、ヨーロッパの「シリコンバレー」[2]として知られている。シスタ・サイエンス・シティは、公共部門、企業、学界・研究界間の革新的な協力モデルに基づき構築されており、市内の複合施設全体にインターネットを含む多くの便利なインフラが整備されている。

高さ120m。スカンジナビアで最も高いビルの1つであるビクトリアビル(シスタ)。出典: https://keralakaumudi.com/en/news/news.php?id=359976&u
テクノロジーパークは、各分野の経済における応用・展開のための知的製品の研究開発に焦点を当てている。又、テクノロジーパークはソフトウェア開発、テクノロジーリサーチ、ソフトウェア・テクノロジーのアイデアの研究・共有・開発分野に関連するスタートアップのための場所でもある。更に、テクノロジーパークは高質な人材、特にテクノロジー人材育成のための良好な実践環境でもある。
サイエンス・テクノロジー・パークは知識の共有から、研究施設・設備・機器へのアプローチ、試験、評価、生産方法における革新の促進、商業的革新、国・地域・世界のサプライチェーンの価値向上、各国政府・大学・民間企業・サイエンス・テクノロジー研究・開発者間の交流・連携の強化に至るまで、様々なメリットを齎している。
環境面のメリットとして、テクノロジーパーク、特にハイテクパークは環境への影響が少ない傾向がある。テクノロジーパークモデルは、化学工業や鉄鋼生産などの重工業向け工業団地のモデルとは異なり、ソフトウェア、デジタルアプリケーションの研究開発、アイデア開発等に焦点を当てている。従って、テクノロジーパークは環境への直接的および間接的な影響を及ぼすことが少ないばかりか、むしろ、ソフトウェア製品とテクノロジーは生産効率、社会経済開発、グリーンかつ持続可能な経済への移行促進に貢献するために応用される。
ユネスコによると、世界中に400以上のテクノロジーパークが存在し運営されており、サイエンスパークの数は増加し続けている。米国はサイエンスパーク数において世界第1位(150か所)、日本は第2位(111か所)にランクされている。アジアでは、中国は1980年代半ばからサイエンス・テクノロジー・パークの開発を開始し、これまでに約100のサイエンス・テクノロジー・パークが存在する[3] 。
サイエンス・テクノロジー・パークの展開における世界的リーダーである米国は、ソフトウェア・サイエンス・テクノロジーの研究開発への投資に力を注いでいる。例として、デラウェア州(米国)のデラウェアテクノロジーパークは、科学研究、持続可能な未来を支える再生可能エネルギーソリューション、最先端の情報技術、ゲーム・エンターテインメント分野における先端材料、金融技術に焦点を当てていることが挙げられる。さらに、デラウェア州の魅力的な投資環境はデラウェアテクノロジーパークへの投資家の誘致を促進するためのプラスポイントでもある。カリフォルニア州(米国)のシリコンバレーは、数多くのテクノロジー、ソフトウェア、インターネット企業の本拠地であるテクノロジーイノベーションとテクノロジー・スタートアップ・エコシステムの主要なグローバルセンターとして知られている。シリコンバレーには英文ビジネス誌『FORTUNE(フォーチュン)』(米国)が投票したフォーチュン1,000(売上高の多い米国企業上位1,000社)にランクインされた、アップル、マイクロソフトなど、30を超える企業が存在する。

2001年~2020年間にシリコンバレーで雇用された労働者数:Tier1(高スキル/高給与)、Tier2(中スキル/中給与)、Tier3(低スキル/低給与)。出典:BW Research[4].
アジアでは、日本・韓国・中国がサイエンス・テクノロジー・パークの構築、運用、開発を主導している。日本では、福岡ソフトウェアリサーチパーク、北九州学術研究都市、神戸サイエンスパーク、三重ハイテクパーク、つくばサイエンスシティなどのサイエンス・テクノロジー・パークが、製造、ロボット、人工知能における応用科学研究の分野で世界的に知られている。北九州学術研究都市は、北九州市政府、企業団体、学界(北九州市における北九州学術研究都市KSRP副会長、科学技術大学理事長など)の三者間の連携により形成され、製造革新、自動車技術、ロボット技術分野における研究・技術移転プロジェクトを結びつけ、中小企業を支援することに焦点を当てている[5]。

北九州学術研究都市(日本)。出典:https://www.ksrp.or.jp/e/
韓国にはソウルテクノロジーパーク、仁川テクノロジーパーク、忠南テクノロジーパーク、済州テクノロジーパークなどのテクノロジーパークが存在する。韓国は電子機器、半導体デバイス、携帯電話、デジタルデバイスなどをリードする世界最先端のテクノロジーを接続し、デジタル化された国の1つとして知られている[6]。韓国では、テクノロジーパークの開発は地域の経済成長を促進し、それにより国の経済成長を刺激する上での韓国政府の主要な戦略の1つである。韓国における8つの地域テクノロジーパークは8つの異なる都市に設置され、各地域間のバランスよい経済発展に重要な役割を果たしている。さらに、韓国政府は中小合弁産業の発展を促進することを目的に、ハイテク企業によるテクノロジーパークでの事業活動への投資を奨励するべく数多くの解決策を実施している。仁川テクノロジーパークでは、航空産業、ロボット産業、生物産業、グリーン産業、人材育成を戦略的な事業として設定している[7]。

仁川テクノロジーパーク(韓国)における松島セントラルパーク。出典: https://www.trip.com/travel-guide/attraction/incheon/songdo-central-park-90331/
中東地域では、エルサレム(イスラエル)におけるHar Hotzvimテクノロジーパークはイスラエルの主要な情報技術センターの1つであり、世界でも重要なテクノロジーセンターの1つと見なされている。Intel、Teva、Ciscoなどの企業は同テクノロジーパークに拠点を置いている。又、Har Hotzvimは中小テクノロジー企業やスタートアップ企業の本拠地でもある。1970年代に設立されたHar Hotzvimは、現在までに9,500人以上の労働者を雇用してきた[8]。

エルサレム(イスラエル)におけるHarHotzvimテクノロジーパーク。出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Har_Hotzvim#/media/File:Har_Hotzvim_entrance.jpg
アジアでは、インドがソフトウェアの研究開発・アウトソーシングにおいて強力な国の1つである。インドのソフトウェアテクノロジーパークは、海外市場へのソフトウェア輸出を促進し、ソフトウェア輸出業者にサービス提供することを目的として1991年に設立された。現在、ティルバナンタプーラムにおけるテクノロジーパークは、総面積や入居テナント数の面においてもインド最大のテクノロジーパークとして認められている。1990年11月18日にケララ州政府(インド)により設立されたティルバナンタプーラムテクノロジーパークは、現在でも開発規模の面でインドをリードしており、世界でも最も環境に配慮したテクノロジーコンプレックスの1つとして見なされている。また、ケララ州には、テクノロジー企業向けのインフラとスマートワークスペース、テクノロジーソリューションを提供し、情報技術分野の投資家にとってインドの理想的な目的地の1つとして評価されている別のコンプレックスも存在する[9]。

ティルバナンタプーラムテクノロジーパーク(インド、ケララ州)。出典:https://keralakaumudi.com/en/news/news.php?id=359976&u
ベトナムは、世界や地域のトレンドに追いつき、世界や地域における主要なソフトウェアアウトソーシングセンターになるべく取り組みを徐々に進めている。2003年8月28日、ベトナム政府はハイテクパークの規定に関する政令第99/2003/ND-CP号を公布した。本政令の第1章第2条・第3条によると、ハイテクパークは首相決定により設立された明確な境界を持つ多機能の経済技術エリアであり、ハイテクの研究・開発・応用、ハイテク企業の育成、ハイテク人材の育成、ハイテク製品の製造・取引を目的としており、ハイテクパーク内には、輸出加工区、保税倉庫、保税工場、住宅エリアなどが存在することがある[10]。上記政令では企業に対するハイテクパークで享受できる優遇措置(資本配分・建設投資予算を優遇し、平等に接し、発展の為の好条件を与え、国家が投資資本、資産および特許などの所有権を保護する他、投資プロジェクトの実施期間中に金銭的手段、国有化による没収を行わないことを保証する)についても規定した。2008年11月13日に公布されたハイテクに関する法律は、ハイテク活動およびハイテク活動を促進するための政策・措置を規定した[11]。更に、2021年3月16日に公布された決定第10/2021/QĐ-TTg号(2021年4月30日発効)はハイテク企業を特定するための基準を規定した[12]。
現在、ハノイのホアラックハイテクパークは経済の近代化・工業化を加速することを目的として、1998年10月12日付決定第198/1998/QD-TTg号におけるマスタープランに基づき首相により設立された国立ハイテクパークである。2008年、JICAはホアラックハイテクパークのマスタープランの研究・調整を支援した。2014年10月25日、首相は2030年までのホアラックハイテクパーク建設に関する一般計画の調整任務を承認する決定第201/QD-TTg号を公布した。2016年5月27日、首相は2030年までのホアラックハイテクパーク建設に関する一般計画の調整を承認する決定第899/QD-TTg号を公布した。ホアラックハイテクパークは国家レベルのハイテク研究・開発・応用センターであり、人材育成、生産開発、サービス提供、ハイテク製品の取引き、ハイテクスタートアップのインキュベーターのための施設である。ホアラックハイテクパークの主な事業分野として、情報技術、電子、生物学、機械製造、新素材、新エネルギー、メカトロニクス、開発奨励されているハイテク製品などが挙げられる[13]。ホアラックハイテクパークはベトナム初の最大規模のハイテクパークと見なされている。ノイバイ国際空港の近くに位置し、1,500ヘクタール以上の面積を有するホアラックハイテクパークには次の6つの機能エリアがある:①研究開発エリア、②ソフトウェアエリア、③ハイテク工業団地、④教育訓練エリア、⑤イベント(会議、セミナー、フォーラム、展示会など)およびサービスエリア(レストラン、病院、ホテル、スーパーマーケットなど)。
ハイフォン市は中央政府直下の主要都市の一つであり、地域経済の促進、国家の経済発展に貢献するという重要な役割を果たしている。政府の開発方向性に従い、2018年12月27日、ハイフォン市人民委員会は2030年までを視野に入れた2025年までの投資優遇・条件付き投資・投資禁止産業プロジェクト目録を発行した。特に、情報技術とハイテク分野、ハイテク産業支援工業製品はハイフォン市への投資が奨励されている分野の1つである。現在、ハイフォン市にはVSIPハイフォン工業団地、DEEP C工業団地、Nam Dinh Vu工業団地、MP Dinh Vu工業団地、Trang Due工業団地、An Duong工業団地、Nam Cau Kien工業団地、Nomuraハイフォン工業団地、Do Son工業団地などが存在する。その内、Do Son工業団地、An Duong工業団地、Nam Cau Kien工業団地およびNomuraハイフォン工業団地は、ディンヴー・カットハイ経済区外に所在する。これらの工業団地において生産・事業活動を行う企業は、ハイフォン市や全国の社会経済発展に大きく貢献している。国内およびアジア地域、世界の経済圏との接続に便利な立地にあるハイフォン市は、若くハイスキルの人的資源および整備されたインフラを有することから投資の波が押し寄せている。同市へのサイエンス・テクノロジー・パーク構築は、投資の呼びかけ、研究・生産・補助的な事業開発分野の促進、内力(資源、財源等)の向上などの様々な機会がうまれ、都市のグリーンな生産・成長・開発目標の実施に大きく貢献することが可能となる。
[1] https://kista.com/english/
[2] https://www.nordichardware.se/artikel/overclocking-at-intel.html
[3] http://www.unesco.org/new/en/natural-sciences/science-technology/university-industry-partnerships/science-parks-around-the-world/
[4] https://siliconvalleyindicators.org/data/economy/employment/employment-by-tier/total-employment-by-tier-silicon-valley/
[5] https://www.ksrp.or.jp/e/fais/index.html
[6] http://www.unesco.org/new/en/natural-sciences/science-technology/university-industry-partnerships/science-parks-around-the-world/science-parks-in-asia/#c99670
[7] https://www.itp.or.kr/intro.asp?tmid=15
[8] https://www.hotzvim.org.il/about-in-english/
[9] https://kerala.gov.in/it-parks
[10] https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Doanh-nghiep/Nghi-dinh-99-2003-ND-CP-Quy-che-Khu-cong-nghe-cao-51305.aspx
[11] https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Linh-vuc-khac/Luat-cong-nghe-cao-2008-21-2008-QH12-82201.aspx?tab=7
[12] https://thuvienphapluat.vn/van-ban/Linh-vuc-khac/Luat-cong-nghe-cao-2008-21-2008-QH12-82201.aspx?tab=7
[13] https://kland.vn/IndustrialPark/khu-cong-nghe-cao-hoa-lac-ha-noi.html