ベトナム国内で、ハイフォン市ほど多様な建築様式を有する都市は稀です。アジアとヨーロッパの建築が調和して融合したこの都市は、港町として独自の景観を形成しています。その中でも、現在も使用されているフランス建築は文化的・美的価値の高い遺産として残っており、都市の貴重な資源として保存・活用することで、ハイフォン市の魅力向上と持続可能な観光発展に大きく貢献しています。

ハイフォン博物館は、同市を代表するフランス建築の一つであり、その独特な美しさが際立っています。
◆ 数百におよぶ象徴的建築
建設局のグエン・タイン・フン局長によれば、約150年の発展の歴史を持つハイフォン市は、ベトナムで最も早く「フランス人街区」が形成された都市の一つであり、約300件のフランス建築が現存しています。特筆すべきは、それらの大部分が今なお完全に保存されており、実際に使用されているという点であり、文化的・美的価値の高い遺産として、古典と現代が融合するハイフォン市の都市景観を形作っています。
その中でも、100件以上の象徴的な建築物があり、市役所、市劇場とその広場、市博物館、ナムサオ銀行、ハイフォン中央郵便局、ハイフォン駅、ゴー・クエン高校A棟などが挙げられます。これらの建築物はフランス人によって丁寧に設計・施工され、規模こそ大きくありませんが、コンパクトで美しく、フランス植民地時代初期の古典様式、新古典主義、地方フランス様式、インドシナ様式、ネオ・ゴシック、アール・デコ、近代建築まで、ベトナムにおける代表的な建築スタイルを幅広く網羅しています。また、建物に加え、運河や湖、庭園など水辺の景観要素との調和がとれており、河川と都市空間がつながることで、他のベトナム都市にはない独自の美しさを生み出しています。
さらに、ハイフォン市の都市建築は、居住・商業・防衛・工業・港湾といった多機能が融合された点でも独自性を持っています。建設当初から、フランス人はハイフォン市をインドシナ全域における重要な工業都市として位置づけており、金川(Song Cấm)沿いに多くの工場や施設を配置しました。ホアン・ジエウ港(旧サウ・コー埠頭)、ハ・リー運河との交差点にあるハイフォンセメント工場、発電所、陶器工場、繊維工場などがその例です。これらの施設は時間の経過とともに老朽化しましたが、文化的・歴史的・建築的な価値を持ち、特に文化観光の推進において重要な資源となっています。
◆ 遺産を資源に変える
フランス建築物は建築的・歴史的・文化的価値を有すると評価されているにもかかわらず、近年では本来の管理・保存規定に従わずに用途転用された事例も多く、価値ある建物の喪失や、別荘の改変、高層ビルへの置き換えといった問題が生じています。そのため、フランス建築の保存と完全性の維持は急務であり、同時に都市遺産としての建築物を新時代の都市発展に活用していく必要があります。
建設局住宅・不動産市場管理課のダン・トゥイ・ヴァン氏によれば、近年、価値あるフランス建築の一部が市内の公的機関の庁舎として使用されており、元の建築様式を保ったまま修復・改修が進められています。2024年8月7日、ハイフォン市人民委員会は「建築・芸術・文化・歴史的価値を有する住宅・建築物の管理および保存対象リストに関する企画書」を承認する決定第2799/QĐ‑UBND号を公布しました。
この決定により、保存対象とされた建築物は217件であり、内訳は第1種建築物12件、第2種68件、第3種137件、さらに特別規定による管理対象建築物が6件となっています。市は建設局を中心に、関係部局や地方自治体と協力して、毎年このような建築物を調査・評価・分類し、新たに追加する建築物の保護措置を講じていく方針です。また、市では2040年までのハイフォン市都市全体計画、2050年までのビジョンに基づき、「ハイフォン市建築管理規則」の制定を予定しており、その中で歴史的中心部の建築管理に関する具体的な規定を設ける予定です。
保存対象に指定された217件については、各建築物の種類に応じた保存・修復方針が定められており、いわゆる「博物館化」や都市生活から隔離された「箱詰め保存」ではなく、建築物を都市の「生きた存在」として、現代の都市生活と有機的に結び付けるという方針がとられています。これにより、建築物が「生き続け」、観光客を惹きつける重要な拠点となり、観光振興や都市発展の創造的資源・原動力としての役割を果たしていくことが期待されています。